2013年10月21日

決める政治。だが何を?

決める政治。だが何を?
風知草:決める政治。だが何を?=山田孝男
毎日新聞 2013年10月21日 東京朝刊

 「決める政治」にも決められない領域がある。原発の使用済み燃料の最終処分場を決められない。
 それなのに原発推進・再稼働はおかしくないか。政治は本当に必要なことを決めているか。国家国民の将来にとって真に重要な課題が、じつは見失われているのではないか−−。

 「原発ゼロ」の小泉純一郎元首相(71)の、計算ずくの挑発が続いている。
 16日、小泉はメディア露出を解禁した。千葉県木更津市での講演会にテレビカメラを招き入れた。
 「私が原発ゼロにしろという一番の理由はね、使用済み燃料の処分場がないっちゅうことですよ」
 マスコミを避けてきた元首相の動画は夜のニュース番組をにぎわした。
 「私は政治家は引退したし、二度と国会議員に返り咲くつもりはない」
 「どっかの新聞が(脱)原発で新党考えてんじゃないかって書いてたけど、毛頭考えてないよ……」
 さりげなく臆測を退けつつ、小泉は読売新聞19日朝刊に寄稿した。小泉を批判した8日の読売社説への反論だ。「小泉発言はあまりに楽観的、無責任で、見識を疑う」という社説。小泉はこう切り返した。
 「核のごみの処分場のあてもないのに、原発政策を進めることこそ不見識」
 「過ちては改むるにはばかることなかれ……」

 小泉の攻勢は臨時国会にも波及した。17日の衆院本会議で、みんなの党の渡辺喜美代表(61)が小泉発言について質問。安倍晋三首相(59)は小泉の名には触れず、こう答えた。
 「(核廃棄物)最終処分方法としての地層処分については20年以上の調査研究の結果、我が国においても技術的に実現可能であると評価されています」
 「処分制度創設以降、10年以上も処分地選定調査に着手できなかった現状を真摯(しんし)に受け止めなければなりません。国として、処分地選定に向けた取り組みの強化を、責任をもって検討してまいります……」
 この首相答弁にこそ問題が凝縮されている。

 地層処分とは、向こう10万年、猛毒の放射線を出し続ける核廃棄物を地下に埋めて管理することだ。日本は1976年から研究を進め、99年、理論上は「実現可能」と総括した。
 だが、3・11以降、10万年の管理を、ましてやこの地震列島で夢想すること自体、正気の沙汰かという当然の疑問が生じた。
 国は2002年から最終処分場用地を公募しているが、引き受け手はない。いまだ「取り組みの強化を検討(・・・・・・・・・・)」するという答弁が精いっぱいなのである。
 北米に「決められない政治」あれば、極東に「決める政治」あり。昔は逆だったが、それはおく。
 安倍首相の所信表明によれば、この国会は「成長戦略実行国会」であり、「決める政治」で国民の負託に応えねばならない。
 政府は産業競争力強化法案の成立を急ぐが、この法案が何を生み出し、どんな繁栄をもたらすか、具体的には想像できない。
 他方、「決める政治」の外に置かれた核廃棄物問題が、日本の将来に破滅的な影響を与える可能性は想像できる。再稼働でつかの間の豊かさを得ても、増え続ける核廃棄物を抱えて地獄を見ると見当はつく。
 「決める政治」を目指す安倍首相の意気込みは頼もしい。期待を鼓舞して経済再生を引っ張る集中力も非凡。だが、希望的観測を排して決めなければならない歴史的課題もある。
 安倍首相の歴史的決断に期待する。(敬称略)(毎週月曜日に掲載)

写真は2012年6月関連記事。


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Posted by 若太夫 at 11:21│Comments(0)ふるさと
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